第6章

恵子視点

 室内に鳴り響く大音量の音楽は止まらなかったが、歓声はピタリと止んだ。

 健太は弾かれたようにソファから飛び起き、その顔からはさっと血の気が引いて病的なほど蒼白になった。

「恵子!」彼はよろめきながら前に出ると、開いたままの襟元を必死に直そうとした。

「ち、違うんだ、誤解だよ。ただふざけていただけなんだ! あいつらへの冗談でさ!」

 私は彼に歩み寄り、再印刷したばかりの離婚届を、その嘘まみれの顔に直接叩きつけた。

 分厚い書類の束が彼の頬を張る。

「あなたの『献身的な夫』ごっこは、これにて正式に終了よ、健太」

 彼は身を乗り出し、私の手首を必死に掴んだ。

「恵子、...

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