第1章

洗濯をしている時、そのレシートを見つけた。それは彼のジャケットのポケットから滑り落ち、まるで逃げ出そうとするかのように床へと舞い降りた。

「料亭 花月庵

2024/12/15 20:30

お客様人数:2名」

午後八時三十分。その時、私は救急外来の待合室にいた。座り心地の悪さを追求して設計されたかのようなプラスチックの椅子に腰を下ろして。まるで、悲嘆に暮れる人間にはさらなる罰が必要だと言わんばかりに。

母が台所で倒れたのだ。近所の人が母を見つけ、救急車を呼んでくれた。私が病院に着いた頃には、すでに検査が行われていた。「心筋梗塞の疑いがあります」と医師は言った。「一晩経過観察が必要です。場合によってはカテーテル治療や手術が必要になるかもしれません」

私は宮川雄次にメッセージを送った。「お母さんが救急外来にいるの。来れる?」

返信が来たのは二十分後だった。「残業で遅くなる。深刻なのか?」

「手術の話も出てる。怖いの」

「妹に来てもらえないのか?」

妹は隣の町に住んでいる。ここに来るには最低でも六時間はかかる。

「あなたにいてほしいの」

入力中を示すフキダシが三回現れては消え、ようやく彼からのメッセージが届いた。「明日は佳奈のプレゼンがあるんだ。彼女がパニックになってて、準備を手伝わないといけない。状況は逐一知らせてくれ、いいな? 君は強いから、きっと対処できる」

君は強いから、きっと対処できる。

その言葉はもう何百回と聞かされ、もはやただの雑音と化していた。病院の蛍光灯が発する低い羽音のように。

真夜中過ぎ、看護師が出てきた。年配の女性で、優しい目をしていた。「旦那様はいらっしゃいますか?」

私は口を開きかけ、また閉じた。「仕事なんです」

彼女は頷いた。相手が嘘をついていると分かっていても、それを口にするのは無粋だと知っている大人の反応だった。

手術には六時間かかった。私はその一分一秒を数えていた。壁の時計が時を刻むのを眺めながら、他人の家族たちに囲まれた待合室で、ただ一人座り続けていた。

ついに医師が出てきた時――白髪交じりで、疲れ切っていたが――彼は手術の手順、リスク、そして回復までの見通しを説明した。私は頷き、スマホでメモを取った。手持ち無沙汰を紛らわせるために。書類にサインをし、トイレの中でググった質問を医師に投げかけた。他に何を訊けばいいのか分からなかったからだ。

「退院後しばらくは、ご家族の方に付き添っていただく必要があります」と彼は言った。

「私がやります」と私は答えた。

その時すでに、分かっていた。宮川雄次はそこにはいないだろうということを。

午前四時、車で家路についた。道路は空っぽだった。家は暗闇に包まれていた。

家の前に、宮川雄次の車はなかった。

今、私は自宅のキッチンに立ち、あのレシートを握りしめながらバラを見つめている。

毎週金曜日に買っているものだ。黄色いバラ。かつては私が一番好きだった花だから。食卓の青い花瓶に生け、数日おきに水を替え、その存在には意味があるのだと自分に言い聞かせてきた。

今週のバラは端が茶色く変色し、花弁は内側に丸まっている。花瓶の水は白く濁っていた。

水を替えるのを忘れていたのだ。

あるいは、もうどうでもよくなってしまったのかもしれない。

手の中にあるレシートの金額は、私の一週間分の食費よりも高かった。和牛の最高部位を使った炙り焼き、銘酒獺祭の大吟醸、そして職人手作りの本葛餅でお締めくくりを。

宮川雄次は本葛餅が嫌いだ。甘すぎると言って。

小野佳奈の大好物だ。

私は枯れかけたバラの横に、レシートを置いた。茶色い花弁の隣にあるその紙切れは、ひどくおぞましいものに見えた。知っていたけれど見たくなかった真実の証拠品。

三年前、私は宮川雄次に1200万円を渡した。住宅の頭金にするはずのお金だった。私の両親が何十年もかけて貯めてくれたものだ。「自分のために使いなさい」小切手を渡してくれた時、彼らはそう言った。「自分のものになる何かを買いなさい」と。

その代わりに、私は雄次の夢に投資した。

青空建設の経営は火の車だった。彼は毎晩四時間しか眠らず、深夜二時でも電話に出て、疲れ切った表情で帰宅する日々を送っていた。「あと少しなんだ」と彼はよく言っていた。「大口の取引先さえ見つかれば」

だから私は彼にお金を渡した。青空建設の物言わぬ出資者となったのだ。「物言わぬ」というところが肝心だ。

三年間、私はフリーランスのデザイン仕事を請け負って、住宅ローンや光熱費、生活費のすべてを賄った。安い報酬の小さな案件ばかり。その間、雄次は他人のために美しい建物を建てていた。

「事務所が安定したら」と彼は約束した。「軌道に乗りさえすれば」

だが、いつだって何かが起きた。いつだって、私以上に彼を必要とする誰かがいた。

大抵は、小野佳奈だ。

彼女は二年前に事務所に入った。「営業担当」と雄次は呼んでいた。コネがあり、社交的で、高い食事を共にしながらクライアントを魅了する才能があった。

そして彼女には、常に緊急事態がつきまとった。

毎週のように何かが起きた。終わらないプレゼン資料。一人では手に負えない厄介なクライアント。「精神的に不安定」にさせる離婚調停。そのたびに、雄次はすべてを投げ出した。デートの夜をすっぽかし、友人のパーティーを欠席し、何週間も前から立てていた予定をキャンセルした。

「今、彼女には支えが必要なんだ」と彼は釈明した。「わかるだろ?」

分かっていた。いつだって分かっていたとも。

それこそが、良き妻の務めなのだから。

玄関のドアが開く。雄次が帰ってきた。

私は食卓の席から動かなかった。ネクタイを緩めながらキッチンに入ってくる彼を目で追うだけだ。疲れているようだが、どこか満足げだ。自分が重要な人間だと感じている時特有の、あの疲労感。

「遥」彼は私に気づいて微笑んだ。「まだ起きてたのか。なあ、聞いてくれよ。佳奈のプレゼン、大成功だったんだ。クライアントもデザインを気に入ってくれて、次の段階の契約も取れた。これはでかいぞ」

「私たちにとって」でかい、と。

私は彼を見つめた。五年前に結婚したこの男を。かつてはベッドまでコーヒーを持ってきて起こしてくれた人。私がプロジェクトで深夜まで仕事をしていると、冷蔵庫に「君は最高だ」と付箋を残してくれた人。

いつから彼は、私を見なくなったのだろう?

いや、そもそも彼は、私という人間を本当の意味で見ていたことなどあったのだろうか?

「残業はどうだった?」私は明るく、興味深そうに声をかけた。

彼は瞬きをした。「え?」

私は繰り返さなかった。ただ、テーブル越しにレシートを滑らせた。

彼が理解するまで一秒かかった。それが何で、どこの店のものか。彼の顔に浮かぶ微細な表情の変化を観察した。困惑、認識、そして罪悪感か、あるいはバレたことへの苛立ちか。

「遥――」

「お母さんはどう?」私は遮った。

彼は凍りついた。「え?」

「私のお母さんよ。覚えてるでしょう、昨日の夜、病院にいたの。心臓の手術で」

彼の顔から血の気が引いた。「なんてことだ。遥、本当にごめん、完全に……お義母さんは無事なのか?」

「無事よ。あなたのおかげじゃないけど」

「訊こうと思ってたんだ、ただ――」

「訊こうと思ってた?」私の声は落ち着いていた。自分でも驚くほどに。「小野佳奈のプレゼンの話をした後で?」

「忘れてたんだ、悪かった――」

「私の母が心臓の手術を受けたことを、忘れてたのね」

「今日はめちゃくちゃ忙しくて――」

「ええ、めちゃくちゃ忙しい一日だったでしょうね」私は繰り返した。そしてレシートを指差した。「銘酒獺祭の大吟醸のお味はどうだった?」

彼は私の口調に戸惑い、私を見た。やがてその視線は、枯れたバラの横に置かれたレシートへと落ちた。

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