第6章
アシスタントはほとんど躊躇うことなく、すべてを拓治に報告したのだろう。
そして翌朝、私はいつものようにマンションの階段を下り、近くのカフェへ向かおうとしていた。エントランスのドアを押し開けると、眩しい朝日が目に飛び込んできて、無意識に手で庇う。
その時、彼が目に入った。
通りの向こう側で、あの黒いセダンによりかかって立っている。
彼の姿は目を覆うほど酷い有様だった。何日も着の身着のままで過ごしたかのようにスーツは皺だらけで、顎には無精髭がびっしりと覆い茂り、目の下には濃い隈が落ちている。いつも身だしなみに一寸の隙もなかったあの男が、今はまるで瓦礫の山から這い出してきたかのよ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
縮小
拡大
