第100章

松村炎はその人影をはっきり捉えた瞬間、ふいに何かを察して眉根を寄せた。

――なるほど。浅木辰也があそこまで取り乱した理由は、結局これか。

だが……。

「ずっと俯いてたら、何も見えないだろ」

松村炎は、桑野夜子に酷似したその後ろ姿を眺め、惜しむように息を吐いた。

バーの照明は薄暗い。相手はトイレから出てきた途端、すぐに俯いて裾を整えはじめ、最後まで顔を見せなかった。これでは本人かどうか判断しようがない。

松村炎は浅木辰也を見やり、声を落として諭す。

「ただ似てるだけかもしれない。桑野夜子は何年も海外だろ。本当に戻るなら、お前が何の情報も掴めないなんてあり得るか?」

浅木辰也は夜...

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