第107章

土曜日、リゾートホテル。

流線型の黒い高級車がエントランス前で止まり、ドアが開く。淡い色のカジュアルウェアに身を包んだ男が、いそいそと反対側へ回り込み、ドアを開けて手を差し出した。

桑野夜子が顔を上げると、情を含んだ狐のような目が真正面にあった。笑みを浮かべたまま、男は言う。

「降りるの、手伝うよ」

桑野夜子はかすかに眉を寄せる。

「浦原若様のお心遣いはありがたいですが、結構です」

差し出された手を当然のように無視し、淡々と車を降りた。

浦原勇人は腹を立てた様子もない。あるいは、もう慣れているのだろう。

彼は夜子を上から下まで眺め、眉尻を軽く上げた。

「その格好、ちょっと堅...

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