第108章

桑野夜子はさっきまで電話に気を取られていて、入ってきたときに鍵をかけ忘れていた。そのせいで、扉口に小山みたいに立ちはだかる男を見た瞬間、胸の奥がじりっと悔しさで焼けた。

「出ていって」

そう言いながらドアへ手を伸ばした、その刹那。

浅木辰也は一切の猶予を与えない。鍵に触れた彼女の手首をがしっと掴み、そのまま軽々と引き寄せて腕の中へ閉じ込めた。

桑野夜子は眉間に深い皺を刻み、押し返そうともがく。

「浅木辰也……いつからそんなに卑怯で無恥になったの」

前は女子トイレに突っ込んできて、今度は女子更衣室。変態呼ばわりされても文句は言えないだろう。

浅木辰也の冷えた瞳が、氷を打ち込んだみ...

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