第110章

正直言って、浦原勇人はこんなにも惨敗したのは初めてだった。

手綱を放り投げるようにしてこちらへ歩いてくる。浅木辰也がレースに勝ち、そのうえ美人を腕に抱いているのを目にした瞬間、胸の奥がつんと酸っぱくなった。

「浅木様、お見事です。俺の負けです」

桑野夜子は顔を上げ、浦原勇人の複雑に揺れる眼差しとぶつかった。はっと我に返り、反射的に浅木辰也の腕を押しのける。

勝者の浅木辰也は余裕すら漂わせ、軽く顎を引いた。

「浦原若様も悪くない。ここまで食らいついてきたのは君が初めてだ。だが――賭けは賭けだ。今夜の夕食は浦原若様の奢りで頼む」

「もちろん」

浦原勇人は微笑んで受けた。

そこへ松...

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