第117章

桑野夜子は、俊哉がそんなことを口にするなんて思ってもみなかった。しばらく言葉に詰まり、彼の顔を見つめて問い返す。

「俊哉、どうして急にそんなこと言うの?」

子どもなんて何も分かっていない――そう決めつけていた自分が恥ずかしくなる。俊哉は思っていた以上に、ずっと大人だった。

俊哉は俯いたまま、腕の中のクッションをぎゅっと抱きしめ、小さな声で答える。

「だって……お母さん、だれかにお世話してもらわなきゃ」

自分と真弓が生まれたせいで、お母さんにはたくさん無理をさせた。お母さんには、夫が必要なんだ――そんなふうに、彼は考えているのだろう。

桑野夜子は小さく息を吐き、手を伸ばして俊哉の頭...

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