第118章

桑野夜子は、自分が胸を張れるような人間だとは思っていない。けれど、淳宏の一途な守りに、心が揺れたことはある。

ただ――その揺れや、無理に受け入れるような態度は、淳宏にとって侮辱でしかない。夜子はそれを、痛いほど分かっていた。

「お前、細すぎ。もっと食え」

箸がふいに伸びてきて、目の前の皿に料理が置かれる。桑野夜子は、わずかに目を見開いた。

顔を上げなくても分かる。浅木辰也の、底の見えない視線がこちらを射抜いている。

夜子は唇をきゅっと結び、小さく「……ありがとう」とだけ言って、俯いたまま箸を動かした。

浦原淳宏はそれを黙って見ていた。二人は目すら合わせていないのに、なぜか空気だけ...

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