第121章

先生はしどろもどろで、要領を得ない。

そのとき背後から、突然、怒鳴り声が飛んだ。

「全員、止まりなさい! 動くんじゃない!」

先生の視線が背後へ落ちた瞬間、怯えが混じったのを桑野夜子は見逃さなかった。先生は彼女を追い越すように小走りで女のもとへ向かい、へりくだった声を出す。

「浩也のお母さん……どうしてこちらに?」

夜子は眉をわずかに寄せ、振り返った。

そこにいたのは、きっちりと髪をまとめ、上品な服で身を固めた女。爪先から視線まで、隙なく作り込まれている。

俊哉が夜子の袖をそっと引き、小声で告げた。

「お母さん、僕とケンカしたの、鈴木浩也だよ」

――つまり、面倒を起こしに来...

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