第136章

桑野夜子はどうしても彼に言い負かされ、結局、されるがままになるしかなかった。

浅木辰也はそっと彼女の手を取り、薬を打撲の跡へ丁寧に塗り込んでいく。力加減は驚くほどやさしく、少しでも痛がらせまいとしているのが伝わってきた。

桑野夜子は、そんな彼の真剣な横顔をぼんやり見つめた。気づけば、いつ手当てが終わったのかさえ分からない。

「幸い、大した傷じゃない。明日の朝、もう一度俺が揉んでやるよ」

浅木辰也がやわらかく言って顔を上げると、ちょうど彼女の呆けたような視線とかち合った。

桑野夜子ははっと我に返り、すぐに手首を引っ込める。

その露骨なよそよそしさに、浅木辰也は思わず笑った。

「俺...

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