第16章

病室を出たあと、鈴木真代の胸の内では怒りがぐらぐらと煮え立っていた。

桑野夜子が子どもを産むつもりでいる――それは、彼女にとってあまりにも大きな脅威だった。

空気を読んで身を引くような女なら、わざわざ自分から手を出すつもりはなかった。

けれど、ここまで来た以上は――。

自分の手で、少しばかり「助けて」やるしかない。

鈴木真代の目にどす黒い悪意がさっとよぎる。立ち去ろうとした、その時だった。ふと顔を上げた先で、男の黒く深い瞳と真っ向からぶつかった。

浅木辰也。

どくん、と心臓が跳ねる。

彼女はとっさに平静を装い、薄く笑みを作って男の前へ進み出た。

「辰也、どうしてここに?」

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