第28章

背後から足音がして、鈴木真代は反射的にスマホを浅木辰也の上着のポケットへ戻した。すぐにくるりと身を翻し、ドアの方へ迎えに出る。瞳に浮かびかけた不安を押し隠し、やわらかな声で言った。

「直った?」

薄手のシャツ一枚の男は、袖を肘下までまくって頷く。

「ああ。見てみろ」

「いいの。あなたを信じてるから」

鈴木真代は乾いたタオルを差し出し、窓の外をちらりと見た。

「もう遅いし、往復の運転も大変でしょ。今夜は帰らないで。客室、用意するから」

浅木辰也は手についた水気を拭いながら、家で待つ桑野夜子の顔が浮かび、首を横に振った。

「いや。帰る」

鈴木真代は何とか引き留める口実を探そうと...

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