第30章

浅木おばあさんは目を覚ましたばかりで、まだ意識がはっきりしていなかった。半分だけ開いた瞼のまま、傍らの人の手を探してぎゅっと掴む。

そして口にした名前が――鈴木真代の、得意げだった笑みをぴたりと凍らせた。

「……夜子」

真代は奥歯をきゅっと噛みしめる。胸の底に湧いた不満を無理やり押し込み、作ったような笑顔で言った。

「おばあさん、真代です。鈴木真代ですよ」

浅木おばあさんはじっと目を凝らし、少し遅れて「うん」と頷く。だが、続けて真代が聞きたくない言葉を落とした。

「……夜子は?」

まるで桑野夜子がここにいるのが当たり前だと言わんばかりに、迷いがない。

「おばあさん、ここにいま...

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