第32章

「先輩……?」

鈴木真代は足を止め、耳を澄ませた。

聞き間違いでなければ――桑野夜子が「先輩」と呼ぶ相手は、浦原淳宏のはずだ。

……浅木グループを辞めるってこと? 本当なら、これは好機だ。

桑野夜子が通話を切った気配を察した瞬間、真代はさっと壁際の死角へ身を引く。夜子が病室へ戻っていく背中を見届けてから、何食わぬ顔で入院棟を出た。

その直後――。

ロビーから入ってきた浅木辰也を見つけるやいなや、真代はどこからともなく現れて彼の前に立った。

辰也はわずかに眉を上げる。

「ここでお前を見るとは思わなかった。今ごろは祖母さんのそばにいる時間じゃないのか」

真代は柔らかく笑って首を...

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