第34章

「どういうこと? まさか、本当に二人は離婚するつもりなの?」

「浅木様、あんなに堂々と愛人を会社に連れてきてるのよ。あれで分からない方がおかしいでしょ。たぶん浅木奥様も、もうお役御免ってことじゃない?」

「はあ……せっかくだし社長奥様に取り入ろうと思ってたのに、まさかこんなことになるなんてねぇ……」

「別によくない? だって浅木様、自分で連れてきたんだから。浅木奥様に取り入れないなら、今度の新しい奥様に取り入ればいいじゃない」

ひそひそ声は、しだいに遠ざかっていった。

桑野夜子は個室から出ると、静かな顔のまま洗面台へ向かった。そこに気まずさは、ひとかけらも浮かんでいない。

きっと...

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