第44章

妙に唐突な一言で、桑野夜子は彼が何を言いたいのかすら分からなかった。

眉をひそめて見上げる。

「……何?」

浅木辰也は手を伸ばし、そっと彼女の頬を撫でた。あたたかな息が顔にかかり、理由もなく空気が甘く濁る。

「……離婚、やめない? な」

言葉は衝動のまま零れ落ちた。自分でも、どうしてこんなことを口にしたのか分からない。けれど言ってしまった瞬間、胸の奥が不思議と軽くなっているのも確かだった。

桑野夜子の頭が、一瞬だけ真っ白になる。

そして迷いなく、きっぱりと言った。

「やだ」

――浅木辰也が狂ってるのか。それとも私が。

鈴木真代を平然と家に連れ込んでおいて、いまさら「離婚は...

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