第58章

「こんなところで、何してるの?」

喉が渇いて水でも飲もうと部屋を出た桑野夜子は、まさか浅木辰也と鉢合わせるとは思っていなかった。

浅木辰也は一瞬、表情をこわばらせた。

それから顔を背け、灯りの下で少し驚いたようにこちらを見る桑野夜子を見つめ、唇を引き結ぶ。

「俺は……その、通りかかっただけだ」

結局、あの言葉はどうしても口にできなかった。

どう切り出せばいいのか分からない。

いや、もしかすると――口にするのが怖かったのかもしれない。

桑野夜子は、なんだか様子がおかしいとは思ったものの、深くは気にしなかった。

「ふうん」

二人の間に沈黙が落ちる。

しばらくして、桑野夜子が...

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