第64章

桑野夜子は瞳をわずかに縮め、視線が勝手に彼の隣へ滑った。すらりと立つ鈴木真代。胸の奥が鈍く痛み、次の瞬間には、その痛みさえ遠のいていく。

「見せたかったのって、これ? 私に、完全に諦めさせたいの?」

浦原淳宏はそっと彼女の手を取った。声音には、甘く絡みつくような色がある。

「ただ真実を見てほしかっただけだ。もう、意地を張るな」

そう言いながら、彼は自然な仕草で夜子を腕の中へ引き寄せた。

桑野夜子は一瞬、息を呑む。反射的に身を引こうとして――低い声に止められた。

「動くな。浅木辰也が、こっちを見てる」

その一言で、夜子の頭は一気に冷えた。

誤解させるつもりだ。

浅木辰也に、「...

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