第66章

桑野夜子は胸の奥がびくりと震え、正体の知れない羞恥がどっと押し寄せた。自尊心が、今にも粉々に砕けそうになる。

……彼は、私を鈴木真代だと思っている。

涙が一気に目尻へ溜まった。けれど酔った男は、彼女がその屈辱を噛み砕く時間すら与えない。

浅木辰也は、いつもの抑制などとうに失っていた。灼けるような息が、乱暴に、容赦なく――また覆いかぶさってくる。

この朝はきっと、馬鹿げたほどの混乱と、どうしようもない荒唐の中で終わるのだろう。

……どれほど弄ばれたのか、時間の感覚すら曖昧だった。すべてが終わったころ、桑野夜子は腰が砕けたみたいに力が入らない。

全身の疲労が眠りへ引きずり込もうとして...

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