第74章

翌日は週末。桑野夜子は出勤もなく、九時を回ってようやくベッドから抜け出した。

来客がなければ、きっともっと寝ていた。

玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは浦原淳宏だった。

「おはよう」

いつもの堅いスーツではなく、淡い色味のカジュアルな装い。整った顔立ちが、柔らかな光をまとったみたいに見える。

「おはよう」

夜子は口元だけで笑ってそう返し、身を引いてリビングへ向かった。浦原も靴を揃えて上がり込み、後ろからついてくる。

彼女の目の下の青黒さに気づいたのだろう、浦原が眉を寄せた。

「昨夜、遅かったのか」

夜子はキッチンで氷水を注ぎ、一気に喉へ流し込む。頭が少し冴えた。

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