第77章

「夜子、こっち!」

桑野夜子が到着ロビーのゲートを抜けた瞬間、迎えの人波の中から弾むような声が飛んできた。

顔を上げると、六年ぶりの下津紗恵が、興奮した様子で大きく手を振っている。隣には、背の高い端正な男が立っていた。

夜子は二人の子どもの手を引き、紗恵のもとへ歩いていく。近づいた途端、紗恵にぎゅっと抱きしめられる。

紗恵は夜子の背中を軽くぽんぽんと叩き、恨みがましい声を出した。

「六年だよ? やっと本物に会えた! この薄情者!」

夜子は叱られるままに受け止め、口元には終始やわらかな笑みを浮かべていた。

「もうすぐ花嫁さんでしょ。そんな泣きそうな顔して、恥ずかしくないの?」

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