第83章

結婚するの?

……そりゃ、そうか。もう六年だ。

何もかも変わった。帰国する前に、分かっていたはずなのに。

胸の奥で渦巻くものをぎゅっと押し込め、桑野夜子は俊哉を抱き上げる。声だけは平らに。

「……おめでとう」

鈴木真代は眉をひそめ、夜子をじろじろと見た。その「おめでとう」が本心なのか、それとも皮肉なのか――読み切れない。

髪をさっと整え、ふっと笑う。

「分かってるならいいの。辰也の前に出てこないで。私たちの生活を邪魔しないでね。出ていくって決めたなら、ちゃんと――全部、断ち切って」

桑野夜子は、目の前の女を静かに見返したまま、何も言わない。俊哉を抱えた腕に力を込め、くるりと背...

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