第86章

真弓は個室を出た途端、脱走した子馬みたいにぴゅーっと前へ飛び出し、あっという間に姿が見えなくなった。

俊哉は扉を閉めて振り返り、かろうじて小さな背中を捉えると、慌てて追いかける。

浅木辰也はぱちぱちと瞬きをした。危うく、酒のせいで幻でも見たのかと思ったほどだ。

だが、目の前の小さな女の子がちゃんと息をしていると確かめた瞬間、胸の奥がふっと柔らかくなる。辰也はしゃがみ込み、目線を合わせて尋ねた。

「お嬢ちゃん、どうしてここにいるんだ? ここはバーだぞ。君が来る場所じゃない」

真弓は、目の前の顔を見上げたまま固まった。

……お兄ちゃんに、そっくり。

どうしてこの人、こんなにお兄ちゃ...

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