第92章

いくつかのロットが流れたあと、ほどなくして桑野夜子が狙っていたブレスレットの番が来た。

細工は見事。なのに、なぜか会場の反応は薄く、札が上がる数もまばらだった。

夜子は一巡様子を見てから、静かに番号札を掲げる。

「200万」

競売人がすぐさま声を張り上げた。

「200万、1回! 200万、2回……」

その言葉が終わらないうちに、VIP席から別の声が割り込む。

「300万」

VIP区画の音声は変声処理が入っている。それでも夜子は、どこか聞き覚えのある響きだと感じた。

――気のせい。

夜子は小さく首を振り、余計な思考を振り払う。まさかここで競り相手が出てくるとは。

唇を噛み...

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