第112章

H市――江原白矢名義の一室。

鈴宮若子はソファに腰を下ろし、瞬きひとつせず窓の外を見つめていた。

ドアが開く音。江原白矢がタブレットを手に入ってくる。

「釣りアカは、もう全部配置済みだ」彼は若子の正面まで来て言った。「あとは君が頷くだけで――」

「三分以内に、沈村政志がどんな畜生じみたことをやってきたか、ネット中が知る」

鈴宮若子は無言でタブレットを受け取った。

画面では、沈村政志の記者会見が流れている。

黒のオーダースーツ。目の下にははっきりとした隈。カメラに向かって、深々と頭を下げた。

「若子チャリティー財団の設立は、私の人生最大の悔いを償うためです」

「残りの人生をか...

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