第113章

指先が鈴宮若子の頬に触れようとした、その瞬間。

パァンッ!

乾いた音が、雨の街角に弾けた。

鈴宮若子が腕を振り抜き、沈村政志の頬を容赦なく打ち抜いたのだ。

沈村政志の顔が、横へと弾かれる。

全力の一撃。

口の端に、赤い筋がにじんだ。

――それでも、彼は気にもしない。

ゆっくりと顔を戻し、鈴宮若子をねめつける。

見慣れないその顔に浮かぶのは、嫌悪と、氷のような冷たさ。

「沈村政志……久しぶりね」

沈村政志は怒るどころか、笑った。

そして一歩、乱暴に踏み込む。

まだ、彼女の手をつかもうとする――

その肩を、江原白矢が素早く押さえた。

ぐっと力を込め、沈村政志を後ろへ...

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