第116章

沈村政志は口を開いた。だが喉の奥からは、かすれた息ひとつ漏れない。

口の中いっぱいに、鉄のような血の味が広がっていた。

「若子……」

彼は勢いよく前へと身を投げ、鈴宮若子のズボンの裾にしがみつく。

「俺が悪い!」

「俺は……獣だ!」

手を上げ、自分の頬を容赦なく叩きつけた。

ぱん、と乾いた音がリビングに反響する。

一発、また一発。

力を抜く気など微塵もない。口の端から、すぐに赤いものが滲んだ。

「殺してくれていい!」

「肉を削いでも、筋を抜いてもいい!」

沈村政志は顔を上げた。血にまみれた顔。

瞳の奥には、底なしの絶望と、縋りつくような懇願だけがあった。

「気が済...

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