第117章

鈴宮若子は二階の寝室、床まで届く窓の前に立っていた。

鉄門の外。雨の中に、ひとつの黒い影が膝をついている。

沈村政志だった。

墓地から、ここまで追ってきたのだ。

江原白矢がドアを押し開けて入ってくると、ついでのようにカーテンを引いた。

「見るな。目が汚れる」

そう言いながら、江原白矢は自分のコートを鈴宮若子の肩に掛ける。

若子は振り返り、ソファへ歩いて腰を下ろした。

表情は、ほとんど動かない。

「跪きたいなら、勝手にそこで死ぬまで跪いてればいい」

階下、鉄門の外。

沈村政志は泥水の中に膝をついていた。

額の傷口は雨にふやけて白くなり、血混じりの水が頬を伝って落ちていく...

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