第16章

どれほどの時間が過ぎたのか、わからない。

病室のドアが押し開けられた。

コツ、コツ……と、ハイヒールの足音。

鈴宮若子はベッドの背に寄りかかり、両手でシーツの端をきつく握りしめた。

いま、彼女の目の前は真っ黒だ。光も影も、なにも見えない。

「……誰?」

喉がからからに乾いていた。

ハイヒールの音が、ベッド脇で止まる。

不意に伸びてきた手が、鈴宮若子の目の前で素早くひらひらと揺れた。

鈴宮若子はまつ毛一つ動かさず、ただ反射的に身を引く。

林原雨子の匂いがした。

その瞬間、林原雨子がくすりと笑う。

「お姉ちゃん、その目……ほんとに見えなくなったの?」

林原雨子が顔を寄せ...

ログインして続きを読む