第2章

沈村政志の声は、骨の髄まで凍らせるような冷たさを帯びていた。

鈴宮若子は首を横に振り、今にも消え入りそうな声で弁解する。

「違う……あなたが思ってるようなことじゃないの。私、無理やり――」

沈村政志は彼女を見下ろした。その目には、わずかな揺らぎすらない。

鈴宮若子の乳首には、鉄のクリップで挟まれた痕がまだ生々しく残っていた。胸元には乳と血が入り混じり、脇腹を伝ってどろりと流れ落ちている。

沈村政志は、奥歯を噛み砕きたくなるほどの憎悪に駆られていた。どうして自分は、こんなにも惨めで、汚らわしく、目も当てられない女を愛してしまったのか。

しかもこの女は、姉を死に追いやった。

沈村政志は薄い唇をわずかに吊り上げる。その笑みは、ぞっとするほど冷酷だった。

「あの写真は偽物だって言ったよな。けど、今この目で見た。まだ嘘だって言うのか、鈴宮若子。おまえには、恥ってものが少しもないのか?」

鈴宮若子は完全に言葉を失った。唇を震わせ、なお何かを言おうとした次の瞬間、顎を乱暴につかまれる。

「そんなに安い女なのか?」

沈村政志の目は血走り、声は歯の隙間から絞り出されるように低く響いた。

「そんなに男にまわされるのが好きか? 腹まででかくして、まだ足りないのか?」

「違う……私は……」

鈴宮若子は息も継げないほど泣きじゃくり、激痛と屈辱に全身を震わせた。

「沈村政志……本当に、私は嵌められたの……お願い、一度でいいから信じて……」

言葉の途中で、押し殺した呻きが漏れる。腹の奥では陣痛が波のように何度も押し寄せ、そのたび、もともと細くやわらかな声がかすかに震えた。

その瞬間、沈村政志は数秒だけ動きを止めた。

鈴宮若子は、もともと息を呑むほど美しい女だった。今は顔じゅう血に汚れ、唇もひび割れているというのに、その顔立ちはなお、絵画から抜け出してきたように整っている。

そこに上気した頬と潤んだ目が重なると、苦痛を訴えているようには見えない。むしろ、男を誘っているようにしか映らなかった。

沈村政志の目つきが変わる。濃く淀んだ陰が、そこを塗りつぶしていく。

彼は乱暴に鈴宮若子の両脚をこじ開けた。下半身がむき出しになり、さっき三人の黒人に代わる代わる犯されたそこは、ひどく赤く腫れあがっている。なおも血と精液の混じった液が、とろりと流れ出ていた。

鈴宮若子はびくりと身を震わせ、怯えきった目で彼を見た。

「な、何をする気……?」

沈村政志は答えない。ただ無表情のまま身を起こし、ベルトに手をかけた。

「沈村政志! あなた、正気なの!?」

鈴宮若子は取り乱して叫ぶ。

「こういう刺激が好きなんだろ」

沈村政志は冷えきった目で彼女を見下ろした。そこにあるのは情ではなく、濁った欲だけだ。

「さっきので足りなかったんじゃないのか? だったら俺が、最後まで満たしてやる」

彼は鈴宮若子の身体を汚いものでも見るように一瞥し、ベッド脇の引き出しからコンドームを取り出した。包装を歯で噛み切り、ゆっくりと装着する。

「沈村政志……あなた、まだ人間なの……?」

震える声で問いかけても、返事はなかった。

次の瞬間、彼は片手で彼女の首を締め上げ、もう片方の手で脚を押し開く。そして一切ためらうことなく、奥へとねじ込んだ。

鈴宮若子の身体が大きく弓なりに反る。

喉の奥から、耳を塞ぎたくなるような悲鳴がほとばしった。

「痛いっ……! お願い、やめて……許して……!」

泣き叫びながら必死にもがく。だが首を絞められ、呼吸すらままならない。まな板の上の魚みたいに、無駄に痙攣することしかできなかった。

沈村政志は止まらない。むしろ、さらに容赦を失っていく。

首を締める手には力がこもり、腰の打ちつけもどんどん激しくなる。その一突き一突きが、身体を内側から貫き裂こうとしているかのようだった。

「許してほしい?」

耳元で響く声は、低くしゃがれ、極限まで押し殺した怒りに満ちている。

「他の男にまわされるのはよくて、俺に抱かれるのは嫌だって言うのか?」

「違う、違うの……」

もう鈴宮若子は、まともな言葉すら紡げなかった。喉から漏れるのは、途切れ途切れの嗚咽だけ。

身体の内側が、裂けていく。

陣痛と沈村政志の激しい突き上げが重なり、意識はじわじわと暗闇へ沈んでいく。耳に残るのは、自分の死にかけたような喘ぎと、沈村政志の荒い息だけだった。

「クズが……ぶっ壊してやる……!」

地の底から響くような声だった。

彼は首から手を離すと、今度はベッドの支柱に縛られた手首をつかみ、そのまま上体を押し潰すように覆いかぶさる。鈴宮若子の身体は無理やり折り曲げられ、せり出した腹は圧迫されて、痛々しく形を歪めた。

「子供……子供が……」

鈴宮若子は、最後に残った力を振り絞ってそれだけを口にする。

「こんな子、死んだほうがましだ」

沈村政志の動きは、さらに速く、さらに荒々しくなった。理性を失った獣そのものだった。

鈴宮若子の瞳から、次第に焦点が消えていく。

下半身から流れ出る血はどんどん増え、ぬるい液体が太腿を伝って落ち、下のシーツを赤く濡らしていく。

そして彼女の意識は、そこで途切れた。

次に鈴宮若子が目を覚ましたとき、自分が病院のベッドに横たわっていることに気づいた。

全身が粉々に砕かれたみたいに痛む。反射的に腹へ手をやると、そこはもう平らになっていた。

鈴宮若子は目を見開き、掠れた声で叫ぶ。

「子供は!? 私の子供はどこ!?」

すぐそばから、看護師の冷えた嘲笑が飛んできた。

「自分の命が助かっただけでもましでしょう。まだ子供の心配なんてできるんですか」

鈴宮若子の頭の中が、一瞬で真っ白になる。世界そのものが崩れ落ちたような感覚だった。

それでも子供が死んだなんて信じられず、彼女は看護師にすがりつくようにして叫ぶ。

「あなたたちが隠したんでしょう!? 返して、子供を返して!」

看護師は、取り乱し悔恨に沈む彼女の様子を見て、ますます軽蔑を深めたように鼻で笑った。

「今さら母親ぶったって遅いのよ。本当に大事に思ってたなら、何人もの男とあんな真似するわけないでしょ」

鈴宮若子は呆然と看護師を見た。

「……何、言ってるの?」

看護師はベッド脇の棚に置かれたスマホを指先でこつこつ叩き、露骨な侮蔑を浮かべる。

「あなたの動画、もうネットで拡散されてるわよ。清楚ぶってたくせに、ずいぶんいやらしいのね」

鈴宮若子は慌ててスマホをつかみ、画面を確認した。

どの見出しも、自分が暴行を受けている映像ばかりだった。しかも投稿者は角度も編集も選び抜いていて、まるで彼女がそれを快楽として受け入れているかのように見せていた。

コメント欄は罵倒で埋め尽くされている。

かつて東京一の美女モデルともてはやされた女の正体は、恥知らずな淫売だった――誰もがそう決めつけていた。

「違う……こんなの、嘘……!」

鈴宮若子は髪をかきむしり、崩れ落ちる。頭が割れそうなほど痛んだ。

そのとき、病室のドアが開いた。

入ってきたのは林原雨子だった。

その顔を見た瞬間、鈴宮若子は腕を伸ばし、錯乱したように叫ぶ。

「あなたね! 動画を流したのは! どうして、こんなことするの!?」

林原雨子は彼女を上から下まで眺め、目いっぱいの嘲りを滲ませた。

「お姉ちゃん、私はむしろ助けてあげたんだよ? 今のあなた、どれだけ有名か知ってる? 東京じゅうで、知らない人なんていないんじゃない?」

「どうして……? 私たち、小さいころからずっと一緒に育ったのに! どうしてこんなことするのよ!」

鈴宮若子は声を張り裂けんばかりに叫んだ。

林原雨子を引き取ったのは、自分の両親の善意だった。恩を返さないどころか、なぜ自分を地獄へ突き落とそうとするのか。鈴宮若子には理解できなかった。

「よくそんなこと言えるね?」

林原雨子の目に、どす黒い憎悪が浮かぶ。

「小さいころから、父さんも母さんも何でもあなたに与えた。私が沈村政志を好きだって知ってたくせに、あの人と結婚するのはあなただった。あの偏った老人どもなんて、とっくに死ねばよかったんだよ」

鈴宮若子の胸がひやりと凍りつく。

「……何を、言ってるの?」

林原雨子はにっこりと微笑んだ。

「まだ知らないんだ? あなたの本当のご両親、さっき死んだよ。あなたのあの淫らな醜聞が恥ずかしくて、絶望して、飛び降りたの」

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