第20章
鈴宮若子の意識は、ただ闇に沈んでいた。手を伸ばしても何ひとつ掴めない、底なしの黒。
耳を埋め尽くすのは、ゴウゴウとうなる砂嵐の音。
「姉ちゃん! 助けて! 痛い!」
鈴宮辰也の悲鳴が、鼓膜のすぐ脇で弾ける。続いて、鞭が皮膚と肉を裂く乾いた音。
黒人の監督が、ぎこちない中国語を叩きつけた。
「まだ半分だ。もう片方の脚も折れ」
パキッ、と骨が砕ける嫌な音。
「やめて!」
鈴宮若子は反射的に両腕を振り回した。
現実では、心電モニターがけたたましい警報音を鳴らしていた。
鈴宮若子は跳ね起きるように目を開く。
――暗い。
目の前は、まだ闇のまま。
全身を貫く激痛が、一気に彼女...
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