第25章

沈村政志は、その場で固まった。

――俺が怖い? 記憶まで失くしておいて、声を聞いただけでここまで怯えるのか。

彼は病床の女を見下ろす。

鈴宮若子は目を閉じ、眉間をきつく寄せていた。眠りの中ですら、身体が小刻みに震えている。

沈村政志は拳を握りしめ、爪が掌に食い込んだ。

胸の奥から、経験したことのない苛立ちが湧き上がる。

沈村政志は踵を返して病室を大股で出ると、ドアを乱暴に叩きつけるように閉めた。

廊下。壁にもたれ、煙草の箱を取り出す。

一本つまみ、火をつけようとした手が、意思に反してびくりと震えた。

翌日、鈴宮若子は目を覚ましていた。だが、記憶は戻っていない。

枕に背を預...

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