第26章

沈村政志は一直線に鈴宮若子の病室へ向かった。廊下の看護師たちは、彼の「人を食いそうな」気配に気圧され、ばらばらと道を空ける。

次の瞬間、病室の扉が――蹴り飛ばされる。

ドンッ、と音が室内で炸裂した。

ベッドの上の鈴宮若子がびくりと震える。視界は利かない。それでも本能が危険を嗅ぎ取り、彼女は反射的に身を縮めた。

知らない男だ。なのに、身体の奥から抑えられない恐怖がせり上がってくる。

沈村政志は大股で近づくと、乱暴に掛け布団をはぎ取った。

「字が書けるんだって? 記憶力がいいんだって?」

首をわしづかみにされ、鈴宮若子の身体が持ち上がる。

「昔、貯水池の堤で見殺しにしたくせに。今...

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