第36章

沈村政志は六階から一階の芝生へ駆け下りた。革靴が湿った土を踏んでつるりと滑りかけ、身体がぐらりとよろめく。

少し先の芝生には、目を覆いたくなるほど血が散っていた。

鈴宮若子が、血だまりの中に静かに横たわっている。

手足はあり得ない角度に折れ曲がっていた。

沈村政志は駆け寄り、震える両腕で抱き起こそうとする。

肩に触れた瞬間、掌に伝わった感触はふにゃりと柔らかい。

骨の支えがない。

――全部、砕けている。

鈴宮若子の頭が力なく垂れ、頬を伝った血が沈村政志の白いシャツへ落ちて、赤い染みがじわりと広がった。

呼吸は、限界までか細い。

胸の奥で燃えていた怒りは一瞬で掻き消え、代わ...

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