第52章

鈴宮若子のひび割れた唇が、かすかに動いた。消毒薬で焼けた喉は声を出すたびに裂けるようで、漏れた音は掠れて聞き取りづらい。

「わたし……死んでない……」

看護師は小さく息を吐き、手つきがいくらか柔らかくなる。

「命拾いしましたね。先生いわく猛毒だったそうで、本来なら助からないはずだったのに……体内の毒が勝手に拮抗したみたいで、三途の川から引き戻されたって。でも傷がひどすぎます。広範囲で感染して壊死も出てる。しばらくは、ちゃんと治療と安静が必要です」

鈴宮若子は目を閉じた。涙が一粒、目尻から滑り落ちて枕に吸い込まれる。

どうして神様は、死ぬことさえ叶えてくれないの。

そのとき、病室の...

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