第53章

沈村政志は大股で詰め寄るなり、鈴宮若子の――点滴の留置針が刺さったままの手首を乱暴につかみ、ぐいっと下へ引きずった。

針先が血管をえぐり、血がぱっとシーツへ跳ねる。

バランスを失った若子は、そのまま病床から叩き落とされた。

膝がタイルにぶつかる。縫い合わせたばかりの皮膚が、また裂けた。

痛みに全身がびくりと痙攣する。それでも彼女は唇を噛みしめ、声ひとつ漏らさなかった。

後ろに身を潜めていた林原雨子が、口元をかすかに吊り上げる。けれど声だけは泣きそうに震えていた。

「政志さん、やめてください……お姉ちゃん、まだ傷が……」

「傷だ? こいつみたいな下種が、ちょっと怪我した程度で何だ...

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