第59章

人を乱暴に突き飛ばすと、沈村政志は大股で裏方――キッチンのほうへ駆けた。

この別荘の正門には警備員詰所がある。鈴宮若子がそこを突破できるはずがない。

死角は一つだけ。台所から裏庭へ抜ける、小さな勝手口。

沈村政志はキッチンの扉を押し開けた。

裏口が開け放たれている。冷たい風が、雨上がりの湿った空気を引き連れて吹き込んできた。

扉枠に隠してあった予備の鍵が、消えている。

沈村政志は裏庭へ飛び出した。

ぬかるんだ芝生に、よろよろと歪んだ足跡が連なっている。

深い踏み跡。脇には何かを引きずった跡――折れた脚を地面に擦りつけた痕だ。

足跡は、裏庭の低い塀の手前まで続いていた。

塀...

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