第61章

鈴宮若子は反射的に目をぎゅっと閉じた。

心臓が、ぎゅうっと締めつけられる。

――沈村政志が追ってきた?

ホームレスがレンガを振り上げた腕を、宙で固めたまま首だけをひねり、橋の下の外をうかがった。

雨の夜に、耳を裂くようなブレーキ音が響く。

光の筋が橋脚の壁をなぞり、すぐに別の方向へ流れていった。

エンジンの唸りがもう一度鳴り、遠ざかっていく。

ただの通りすがりの車が、道路で曲がるときに滑っただけだ。

橋の下は、また静けさに沈んだ。

残ったのは、外の雨音だけ。

鈴宮若子は大きく息を吸い、胸が激しく上下する。

ホームレスは数秒ぽかんとしたあと、こちらを向き直り、地面にぺっと...

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