第62章

路地の入口で、護衛のひとりが怒鳴り声を上げた。

沈村政志が駆け寄る。

懐中電灯の光が、ぬかるんだ地面を白く照らした。

暗赤色の血痕は雨に流されて薄くなっている。だが、引きずられた跡だけはくっきり残っていた。

その筋を辿って路地の奥へ。

角を曲がった先。

あの浮浪者が、まだ水たまりの中に倒れていた。頭の脇には、黒ずんだ血がべったりと広がっている。

護衛が屈み、鼻先に手をやって呼吸を確かめた。

「沈村様、まだ生きてます。気を失ってるだけです。鈍器で殴られたうえに、壁にも頭を打ちつけてます」

沈村政志は地面の浮浪者を睨みつけたまま、視線を横へ滑らせる。壁に残った血の手形。

鈴宮...

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