第70章

指の長い男だった。動きの端々に、どこか気だるい無頓着さが滲んでいる。

「俺が、あいつに何をした?」

冗談でも聞いたみたいに鼻で笑う。

「俺が自殺させたのか?」

「向こうで踏ん張りきれなくなって、石に頭をぶつけて死のうとしたんだろ。結果がこれだ。人とも言えない、化け物みたいな姿になってさ」

鈴宮若子の全身が、ぶるぶると激しく震えた。寒さなのか、恐怖なのか、自分でも判別できない。

弟の胸元――かすかにしか見えない上下。手首に刺さった針。皮と骨だけになった身体。

鈍い刃で心臓を何度も引き裂かれているみたいだった。

「……いったい、どうしたいの?」

若子は沈村政志を睨みつけた。声が...

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