第80章

鈴宮若子は床に座り込み、顔を上げて沈村政志をまっすぐ見つめた。声はひどく柔らかい。

「政志がまだ足りないって思うなら、もっと直すよ」

「あなたの好きだった私に、ちゃんと戻るから……怒らないで?」

沈村政志の胸が大きく上下する。見下ろす視線は冷たく、けれど揺れていた。

相手が折れたことが、息苦しい。

――こんなの、ただの抜け殻じゃないか。

口を開き、何か言おうとして。結局、言葉は一つも出てこなかった。

下手な一言で、彼女を壊してしまいそうで怖い。

沈村政志は背を向けて歩き去る。その背中は、まるで逃げ出すみたいに見えた。

……

洲際ホテルの宴会場は、今夜、眩いほどの灯りに満ち...

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