第82章

大崎信孝の目の奥に、いやらしい光がちらついた。

伸びてきた脂ぎった手が、鈴宮若子のドレスに触れようとする。

若子は反射的に顔を背け、ぎゅっと目を閉じた。

――その瞬間。

バン、と耳をつんざく破裂音が響いた。

大崎信孝が悲鳴を上げる。

巨体がよろめき、尻もちをつくように絨毯へ倒れ込んだ。勢いで横のテーブルがひっくり返り、シャンパンタワーががしゃん、と派手に崩れ落ちる。泡とガラス片が四方へ散った。

会場がどよめく。

悲鳴を上げて後ずさる者もいる。

鈴宮若子がはっと目を開けた。

沈村政志が、いつの間にか飛び込んできていた。

大崎の前の椅子を蹴り倒し、その長身で若子の前に立ちは...

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