第88章

沈村政志は指先を鈴宮若子の鼻先にそっと添えた。かすかな吐息が、指の腹を撫でる。

その瞬間、沈村政志の全身がびくりと跳ね、止まっていた心臓がもう一度動き出した気がした。

「医者はどこだ! さっさと来い!」

振り返り、背後へ怒鳴り散らす。

同行していた医療チームが一斉に駆け寄り、鈴宮若子の処置を始めた。数人が慌てて地面の身体を担架へ移そうとする。

鈴宮若子の右脚は皮膚と肉がめくれ上がり、白い骨が覗いていた。血と肉がぐちゃぐちゃに潰れ、目を背けたくなる惨状。

「丁寧にやれ!」

沈村政志は乱暴に扱った介助員を蹴り飛ばし、眉間に深い皺を刻んだ。

そして自分で腰を落とす。

両腕で鈴宮若...

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