第9章

鈴宮若子のひび割れた唇が、かすかに動いた。

目は開かないまま――それでも、目尻から一筋の涙がこぼれ落ちる。

沈村政志は鼻で笑い、足をどけた。

「今すぐ治療しろ」

沈村政志は、隅で縮こまっている医者へ顔を向ける。

「こいつが生き残れなかったら、お前ら全員殺す」

医者は転げるように駆け寄り、鈴宮若子へ飛びついた。

廊下の外では、林原雨子がガラス越しに中の様子を見つめていた。爪が掌に食い込み、白くなる。

鈴宮若子なんて、こんな目に遭っても死ねないのか。

……。

病室には、鼻を刺す消毒液の匂いが満ちていた。

鈴宮若子は重い瞼を、必死に持ち上げる。

視界はまだ滲み、全身がバラバ...

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