第92章

ドアが蹴破られた瞬間、濃い煙がぶわっと顔面に叩きつけられた。

沈村政志はむせて半歩退く。背後にいた連中も、堪えきれず激しく咳き込みはじめた。

黒煙の層の向こう――沈村政志の視界に、鈴宮若子が映る。

彼女は扉から一メートルも離れていない場所に、うつ伏せで倒れていた。

身にまとっていた病衣は焼け落ち、布切れがわずかに残るだけ。それすら皮膚と肉に貼りつき、剥がれる気配がない。

包帯だらけだった両脚は、今や皮膚がめくれ、焦げた臭いが鼻を刺した。

ぴくりとも動かない。まるで、もう――。

「鈴宮若子!」

沈村政志の喉から、獣じみた叫びが弾けた。

正気を失ったように前へ突っ込もうとする。...

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