第96章

沈村政志は彼女の有り様を見て、苛立ちがいっそう募った。だが江原白矢の言葉を思い出し、どうにか飲み込む。

男の声は少しかすれていた。

「今後は警備を強化させる。二度と同じことは起こさない」

鈴宮若子はベッドに横たわったまま、胸の奥がひどく冷えた。

滑稽だ。

自分は思考だけが残った廃人同然になったというのに、彼が口にするのは「警備」ばかり。元凶については一言も触れない。

笑わせる。

鈴宮若子の指が、沈村政志の掌の中でわずかに動く。手を引き抜こうとした。

だが沈村政志は、ぎゅっと握り締めた。

「鈴宮若子。昔のことは……水に流そう。俺も、お前が男をたぶらかした件は追及しない。お前も...

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