第1章

 初夜の晩、夫はゲームをしようと持ちかけた。

「秘密の交換だ」

 暖炉のそばでウイスキーのグラスを揺らしながら、由治が言った。

「本物のやつだよ。もし外に漏れたら、お前の人生が破滅するほどのな」

 外の猛吹雪は、すでに山を下るすべての道を埋め尽くしている。全面ガラス張りの豪邸は、まるでスノードームの中の世界のようだった——美しく、閉ざされ、どこへも逃げられない。

 立田由治。立田グループの御曹司。万物には値段がついていると信じて疑わない男だ。当然、私にも。

 彼が私を妻に迎えたことは、周囲の人間を大いに困惑させた。名もなき、家族も人脈もない美術品修復家。彼の母親は私のことを『あのプロジェクト』と呼び、彼の友人たちは私がいつまで持つか賭けをしている。

 まずは彼からだった。

「昔、ある女の子に怪我をさせたことがあってね」

 ちょっと車を擦った程度の、ひどく軽い口調だった。

「スキー場のロッジでのプライベートパーティーだ。もう何年も前のことだけど。彼女はそこで働いていた——たしか酒を運ぶ係だったな。あの時、俺たちはみんな完全にキマってたんだ」

 彼は軽く肩をすくめた。

「そもそも、彼女があの部屋に入ってくるべきじゃなかった。でも、入ってきた」

 ウイスキーを一口含む。喉を鳴らして飲み込む。そして、また喋り出す。

 ただそれだけ。一人の少女の人生が、軽い肩すくめ一つに縮小されてしまった。

「次はお前の番だ」と、彼が言った。

 私はソファの上で両足を抱え込んだ。彼の顔は見ず、ただ炎だけを見つめる。

「私、人を殺したことがあるの」と、私は言った。「信じる?」

 由治は声を上げて笑った。頭を後ろに反らすほどの、心底からの大笑いだった。ガラスの壁に反射したその笑い声は、どこか空虚に響いた。

「ああ、本当にお前を愛してるよ」

 彼は目尻を拭った。

「俺より猟奇的な話をしようって魂胆か? お前の勝ちだ、ハニー。お前にはいつも敵わないな」

「冗談で言ってるんじゃないわ」

「で、誰を?」

 彼はまだ笑っていた。子猫が威嚇するのを眺めているかのように、愉快そうに。

「義理の父親よ」私は答えた。

「当時、私は十六歳だった」

 彼の笑みが少しだけ引っ込んだ。完全に消えたわけではない——好奇心がにじみ出る程度に薄れただけだ。彼はソファの背もたれに深く寄りかかり、ウイスキーのグラスを膝の上にしっかりと乗せた。

「全部話してごらん」

 だから、私は話した。

 私が九歳の年、母は谷村雄一郎と再婚した。

 彼は土建業者だった。大きな手と、薄っぺらい笑み。人前ではドアを開けてレディーファーストを気取るが、密室では人を水の中に押さえつけるような男。

 最初は些細なことだった。手首を強く引っ張る。壁に押し付ける。彼は決して顔は殴らなかった——肋骨や腕など、長袖で隠せる場所だけを狙った。

 母は見て見ぬふりをした。家賃を払っているのは雄一郎だ。彼女の計算式の中では、いくつもの青痣は許容すべき代償だったのだ。

「あの人を怒らせないで」

 腕に残った指の跡を見せた時、彼女はただそう言った。

 一番ひどかったのは冬だ。私が本当に彼を怒らせた時、雄一郎はいつも決まった手口を使った。バスタブに氷水を張り、私の首を掴んで、顔を水中に沈める。肺が燃えるように痛み、両足がバタバタと暴れるのをやめるまで、ずっと押さえつけ続けた。

 そして私を引きずり上げ、激しくむせ返るのを見下ろしながら、こう言い放つ。

「これで少しは大人しくなったか?」

 私はいつも「はい」と答えた。そうしなければ、また水に沈められるだけだから。

 由治の顎の筋肉がこわばった。私には見えた——彼の瞳の奥に浮かび上がり始めた、あの救済のファンタジーが。壊された少女。悲惨な過去。それは彼が以前から信じていた『私には彼が必要だ』という思い込みを、見事に裏付けるものだった。

「そんなことが起きてる間、お前の母親はどこにいたんだ?」と、彼が尋ねる。

「ドアのところに立っていたわ」私は言った。

「ただ見ていたの」

 そんな日々が三年続いた。

 私は芸術の世界に『消える』ことで、なんとか持ちこたえていた。美術の先生の計らいで、地元の教会で美術品修復のボランティアをさせてもらえることになったのだ。その地下室の作業場だけが、私が唯一呼吸できる場所となった。塗装の剥がれた聖者、ひび割れた天使。何時間もかけて石膏と忍耐で破片を繋ぎ合わせ、壊れたものを再び完全な姿へと蘇らせる。

 それは私が唯一コントロールできる『修復』だった。

 そしてあるクリスマスイブ、母は雄一郎が仕事に行っている隙にスーツケースに荷物を詰めた。置き手紙もない。電話もない。新しい連絡先も残さなかった。

 彼女は逃げたのだ。

 私を置いて。

 その夜、帰宅した雄一郎はクローゼットが空になっていることに気づいた。彼は一人でバーボンのボトルを一本空けた。自室に鍵をかけてこもっていた私は、ガラスが割れる音、家具が倒れる音、そして次第に大きくなる彼の怒号をドア越しに聞いていた。

 やがて、すべてが静まり返った。そっちの方がずっと恐ろしかった。

 彼の足音が廊下を伝って近づいてくる。ゆっくりと。わざと足音を響かせながら。ドアノブを回そうとする音がした。

「ドアを開けろよ、可愛い子ちゃん」

 彼の声が変わっていた。妙に優しく。その優しさに、私の肌は総毛立った。

 蹴りが一発。ドアの鍵が壊れた。

 彼がドアの前に立っていた。すでにベルトは外されている。目は血走り、焦点が定まっていなかったが、それは怒りのせいではなく、何か別の感情だった。彼が私に向けたことのない、ある種の感情。

「お前の母親は出て行った」と、彼は言った。

「どうやら、今日からお前がこの家の女主人らしいな」

 彼が一歩踏み出す。

 私の手は、ナイトテーブルの上に置いてあった鑿に触れた。研ぐために教会から持ち帰ったものだ。長さ八インチの焼き入れ鋼。大理石に何世紀も沈着した汚れを削り落とせるほど鋭利な刃。

 そして、人間の肉を貫くにも十分すぎるほど鋭利だった。

 彼が私の髪を掴んだ。私はそれを振り下ろした。

 鑿が耳の下、彼の首元に突き刺さった。グチャリと、湿った嫌な音がした。彼の手の力が抜ける。見開かれた瞳——そこに怒りはもうない。

 あるのは驚愕。

 いつも「はい」としか言わなかった少女が、ついに別の答えを突きつけてきたことが、どうしても信じられないというように。

 彼が崩れ落ちた。

 血はあっという間にリノリウムの床に広がっていった。私が後ずさりする間もなく、その赤い水たまりは私の裸足のつま先まで達していた。

 私はそこに立ち尽くし、血の滴る鑿を握りしめながら、何らかの感情が湧き上がってくるのを待った。恐怖。罪悪感。あるいは解放感。

 何もなかった。ただ静寂と、窓の外を舞う雪、そして私の寝室の床に横たわり、徐々に血を失って死んでいく雄一郎がいるだけだった。

 当時十六歳だった私は、クリスマスイブの夜、一人の死体と共に同じ家の中に取り残された。

 その時、私の頭の中にあった唯一の考えはこうだ。

 ——さて、こいつをどう処理しようか?

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