第5章
「なぜだ」
彼は再び、掠れた声で問いかけた。
「義父の件は嘘だ」
私は言った。
「雄一郎は殺していない。お前の部下が報告した通り、あの老人ホームでゆっくりと腐り続けている。私の手を汚す価値すらない男だ」
由治の胸の上下が、短く、浅くなった。彼の肺が限界を迎えようとしていた。
「だが、私が殺人を犯してでも報いたいと思う人間は、確かにいる」
私はナイトテーブルから自分のスマートフォンを取り上げ、十五年間保存し続けてきた一枚の写真を表示させ、その画面を彼の目の前に突きつけた。
一人の少女。二十歳。ダークな巻き髪、すきっ歯を見せた満面の笑み、鼻の頭には小麦粉が少し。彼女はカ...
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