第1章

 妊娠四ヶ月のときだった。トラックが私の乗る車の側面に突っ込んできたのは。

 病院へと向かう途中、意識が遠のいたり戻ったりする中で、頭上から夫の浜田圭太の声が聞こえた。切羽詰まった、震える声だった。「助けてくれ。いくらかかってもいい、妻を助けてくれ」。右手は手首から先の感覚がなくなっていたが、父はすでに電話にかじりつき、この街で最高の外科チームを手配していた。

 私は思った――ああ、よかった。みんながついていてくれる。私はきっと大丈夫だ、と。

 だが、聞こえてきたのはそれだけではなかった。

 半分開いた手術室のドアの向こうから、夫の声が聞こえてきたのだ。

「先生。赤ちゃんはもうダメなんでしょう。彼女の右手も完全に潰れている――もう二度と図面は描けない。どのみち、彼女のキャリアは終わりです」

 平坦な声だった。たった今、我が子を失った男の悲哀など微塵も感じられない。

「理奈の腎不全はもう限界です。琴音はまだ麻酔で眠っている。今すぐ彼女の右腎臓を取り出して、理奈に移植してください」

 心臓が肋骨を激しく打ち据えた。頭元のモニターがそれに合わせて大きく跳ねる。

 この人は、何を言っているの?

 我が子を失ったばかりの妻から腎臓を切り取って、妹に差し出せって?

 続いて母の声が聞こえた。早口で、どこか苛立っているようだった。「圭太さんの言う通りよ。琴音はどうせもう何も描けないんだから。腎臓を二つ持っていても宝の持ち腐れよ。理奈は私たちが手塩にかけて育てた娘……絶対に死なせるわけにはいかないわ」

「それに、琴音のあの図面だが」父の声は少し潜められていた。「東都中央広場大賞にノミネートされたばかりのやつだ。圭太、金曜日までに署名を理奈の名前に書き換えておきなさい。理奈が助かれば、あの子はこの業界のトップに躍り出ることができる」

 モルヒネのせいで頭がおかしくなったのかと思った。

 これが私の家族?

 これが私が五年間愛し続けた男?

 七年。生まれてすぐに私を手放したこの家族に認めてもらおうと、必死にもがいてきた七年間。夜を徹して図面を描き、得られた賞やボーナスはすべて彼らの手に渡してきた。まるで、捨てられないように縋りつく子供のように。必死に頑張れば、いつか彼らも、理奈を愛するように私を愛してくれるのではないかと思っていた。

 それなのに今、私は手術室の前のストレッチャーに寝かされ、実の親と夫は廊下で、私をまるで残り物のように切り分けようとしている。私の臓器も、これまでの人生の結晶も、すべてを。

「しかし――そういうわけにはいきません。ご家族の正式な同意記録が必要ですし、何より患者ご本人の……」執刀医は言葉を濁した。

「私は彼女の夫です。私がサインします」圭太が遮った。「何があっても私が責任を取ります。理奈が助かるなら、琴音の健康が少し損なわれるくらい何だと言うんです? 琴音はこれくらい、理奈に報いる義務がある」

 報いる義務? 二十年もの間、私の名前と居場所を奪い続けたことに? 圭太が私を少し長く見つめるたびに、仮病を使って倒れたふりをしてきたことに?

 冷たい涙が頬を伝い、傷口に染みた。焼けつくように痛かった。

 その時、コートのポケットの中でスマートフォンが震えるのを感じた。

 画面は放射状にひび割れていたが、電源はまだ入っていた。今朝、東都中央広場の現場で環境音を録音していたのだ。ボイスメモは一度も止まっていなかった――衝突の瞬間も、救急車の中も、そして今、この廊下でも。

 彼らが口にした言葉は、一言残らず、すべて録音されていた。

 私が目を覚ましたのは、三日後だった。

 目を開ける前から、右脇腹の痛みがすべてを物語っていた。そこにあったはずの何かが欠落している。彼らが奪い去ったのだ。

 圭太はベッドの傍らで私の左手を握っていた。その目は赤く充血していた。

「琴音。ああ、よかった。気がついたんだね」まるで図ったかのように、彼の声は震えていた。「本当にごめん。君を守れなかった。赤ちゃんを、救えなかった」

 彼は手首の裏で顔を拭った。

「事故は、現場で聞いたよりもずっと酷かったんだ。衝撃で君の右の腎臓が破裂してしまってね。医者もどうしようもなかったんだよ。そうしなければ、君の命が危なかった」

 私は彼を見上げた。五年間愛し続けた、この顔を。

 なんて美しい嘘だろう。

 もしあのドア越しに彼の言葉を聞いていなかったら、私はこの嘘をすべて信じ込んでいただろう。手を伸ばし、彼の涙を拭ってあげたはずだ。

「大丈夫よ」私は瞳の奥の感情を悟られないよう、伏し目がちに言った。「私は生きている。それが一番大事なことだもの」

 彼は私の額にキスをした。私は何も感じなかった。

 毛布の下で、再びスマートフォンが震えた。新着メッセージだ。

「私のオファー、まだ考えてくれていますか?」

 黒澤宗介。二年前、国際最高会議のコンペで私に敗れた際、部屋の誰よりも早く立ち上がって拍手を送ってくれた男だ。それ以来、彼は父の会社から私を引き抜こうとずっと声をかけてきていた。

 私はこれまで四回、それを断ってきた。

 私は画面を見つめ、そして右手の親指で文字を打ち込んだ。

「お受けします」

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